高齢医療の現場を斬る!

需要が高まりつつある「地域包括支援センター」。その主な役割とは?

地域包括支援センターで
求められる看護師

地域包括支援センターの定義

地域包括支援センターの定義

日本の高齢化の背景と需要

日本は、ほかの国に例を見ないほど急激なスピードで高齢化が進んでいます。日本が高齢化社会になった要因として挙げられるのが、平均寿命が伸びたことによる死亡率の低下と、晩婚化や独身者の増加による少子化です。2002年には合計特殊出生率が1.32と過去最低を更新。それに反して増加し続けているのが老年人口率です。2006年には死亡数が出生数を上回るほど人口減少に歯止めがかかりません。
出生数の減少は、晩婚化が大きな影響を与えています。結婚に踏み切る年が遅めであることも理由の一つですが、晩婚化の要因はそれだけではありません。出産したあとの子育てにかかるコストの上昇も要因とされています。また、もう一つの要因でもある独身者の増加も出生数に大きな影響を与えているといえるでしょう。その理由は、女性の高学歴化や男女の賃金格差が縮小していることで、女性も働きやすい職場環境が構築されているからです。
女性の社会参画も、働き手の数が減少傾向にある日本にとっては増加させたい取り組みの一つですが、実際には女性の就業と出産・育児の両立において成立しないことが人口減少社会の訪れにつながっているといえます。
これからの最大の懸念点は、高齢者の人口増加ではなく、少子化による人口減少です。これは、生産年齢人口とされる15歳~64歳の人たちが総人口に占める割合が低下することを表しています。2015年の時点の生産年齢人口は60.7%でしたが、2060年の予想は51.0%と大きく低下することが見込まれているようです。このとき、人口の10人に4人が高齢者になるとも言われています。実際のところ、2060年の時点で高齢者1人を支えるために必要な現役世代(生産年齢人口)は1人との数値が出ています。これは、1対1の扶養関係を表しており、「肩車社会」と表現されているほどアンバランスな状況なのです。給付と負担のアンバランスさにより、財政破たんのリスクが高まることが懸念されています。
未来の総人口に占める生産年齢人口の割合の低さは、社会保障制度の不安定さを物語っているでしょう。
財政が破たんしてしまわないためにも、現役世代の減少に備えた医療・介護における社会保障制度の見直しが必要とされています。そこで、社会保障制度の一つとして2005年の介護保険法改正で制定されたのが「地域包括支援センター」という地域支援事業を行う機関です。今後、高齢者が住み慣れた地域で自分らしく暮らしていくためにも、日常生活上のあらゆる課題をトータル的に支えることが求められます。そのため、高齢者介護の問題を解決すべく「地域包括支援センター」の設置が少しずつ推進されているのです。

地域包括支援センターとは

<<地域包括支援センターの定義>>
「地域包括支援センターは、介護保険法によって定められており、地域住民の保健・福祉・医療を向上させる目的のほか、介護予防マネジメントや虐待防止など総合的に行う機関です。」

地域包括支援センターは市町村事業に分類されるため、各市町村に設置され、高齢者を支える総合相談窓口の役目を担っています。センターでは、保健師(看護師)、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門スタッフが対応にあたり、高齢者の自立支援をサポート。75歳以上の後期高齢者はもちろん、認知症高齢者の増加にも対応できる地域包括ケアシステムの構築が重要視されています。地域包括ケアシステムでは、住まいや介護、医療、予防、生活支援など、介護が必要な高齢者へサービスを提供するのが目的です。その一貫として活動しているのが地域包括支援センターであり、地域の中核的な機関として、すべての高齢者の相談を総合的に受け付ける施設としての役割を遂行。相談内容に応じて、行政・ボランティア団体・介護サービス事業所などさまざまな機関へ連絡を取ったり、介護予防サービスを利用するための調整を行ったりしています。
介護予防に関する取り組みは、地域包括支援センターの大きな役割の一つです。サービス利用の案内だけでなく、介護予防教室を開いて高齢者一人一人の生活を支援しています。また、虐待や認知症で困っている方のために、地域の民生委員や町内会、医療機関や介護支援専門医といったあらゆる関係機関との連携にも力を入れているのが特徴です。
もちろん、人口の多い大都市部と過疎化が進む地方とでは、高齢化の進展状況に大きな差が生じます。しかし、各市町村区や都道府県が地域の特性に応じて包括的な支援・サービスの提供体制を作り上げていくことは必要不可欠です。日本は世界でも有数の健康長寿大国として、これからの少子高齢化社会をどう生き抜いていくのか諸外国からもその動向が注目されています。

構成しているのは3職種の専門家

地域包括支援センターは、保健師(看護師)、社会福祉士、主任ケアマネジャーの3つの職種が連携して成り立っている機関です。それぞれの専門性を活かしながら、以下のように個々の役目を遂行しています。

保健師(看護師)

主に、高齢者やご家族から医療や介護についての相談に対応。病院や保健所とのやり取りはもちろん、「介護予防マネジメント」として介護予防プランを作成したり、健康診断の受診を促したりするなど、疾患予防を意識してもらうための活動をメインに行っています。また、主任ケアマネジャーとの連携も密に取り合い、一人ひとりに合ったケアプランを作成するのも担当業務の一つです。

社会福祉士

主に、「総合相談」の窓口として活動している専門家です。相談支援や自宅・施設などを利用している方を訪問したり、高齢者一人の独居世帯や高齢夫婦世帯などの安否を確認したり、成年後見制度を利用する場合のサポートを行ったりなど、総合的な業務を担当。その他に、悪質商法などの消費者被害や虐待問題など、高齢者の権利を守る「権利擁護」への対応も行っています。

主任ケアマネジャー

ケアマネジャーへの個別指導、育成、相談対応など、「包括的・継続的マネジメント」の支援業務が主になります。介護サービス事業者との連携も求められ、介護全般の相談対応にあたります。今後はさらに、地域の介護問題、課題の発見・解決、介護環境の発展など、さまざまな活動への取り組みも期待されている職種です。

地域包括支援センターで利用できるサービス

サービスを利用できるのは、センターがある地域に住んでいる65歳以上の高齢者、またはその支援活動に関わっている方とされています。 地域包括支援センターが担っているのは主に以下4つの業務です。

介護予防ケアマネジメント

要支援認定者または支援や介護の必要性が高くなる方を対象とした支援事業です。介護予防ケアプランの作成では、歩行状態や移動範囲、能力の状況、日常生活の状態、社会参加や対人関係、コミュニケーション、健康管理、精神面に至るあらゆる状況を把握。介護状態になる恐れのある高齢者に対しては、介護予防の取り組みとして、運動器・口腔の機能向上や栄養改善、閉じこもり・認知機能低下の予防、うつ予防などの介護予防サービスを紹介しています。個々に必要な介護予防プログラムの情報提供や、健康的な生活への意欲向上の促進への取り組みが主な支援内容です。

総合相談、支援

介護、医療、福祉、保健に関するさまざまな制度など、高齢者に向けた幅広い相談に対応。自宅訪問によるサポートも行われています。高齢者本人やご家族が必要とする行政機関へ連携を図ることが主な業務です。

権利擁護

金銭管理が難しくなってきた高齢者を支援し、その権利を守るための取り組みです。例えば、金銭的搾取、詐欺、虐待被害など、早期発見と防止に努めています。また、周囲の人が後見人となり高齢者の財産を守るという成年後見制度の手続き支援も対応可能です。

包括的、継続的ケアマネジメント

センターで働くケアマネジャーを対象とした支援サービスです。主に、研修会やネットワーク作り、アドバイスなど、さまざまなサポートを通して支えています。例えば、地域ケア会議の開催や支援困難事例への指導・アドバイス、ケアマネジャーへの個別相談、自立支援型ケアマネジメントのサポートなど、取り組みは多様です。

地域包括支援センターは、地域の身近な相談窓口です。「自分がどのような福祉支援を受けられるのか分からない・・・」という高齢者の方々のために、介護保険をはじめとする福祉・保健・医療の公的制度や支援制度などの活用についてのサポートを行っています。しかし、公的制度によって受けられる支援の内容は、加入している健康保険や所得・年齢・障害の程度によって少しずつ異なるので注意が必要です。

読んだら転職したくなる!?外せない記事3選

看護師にオススメの資格 看護師にオススメの資格
少子高齢化が進む日本では今、保健師・ケアマネージャー・社会福祉士などの存在が重宝されています。どの資格も、今後のキャリアアップや転職には欠かせない《必須スキル》です。あなたはどの資格に興味がありますか?

地域包括支援センターに転職した人の声 地域包括支援センターに転職した人の声
「常勤がツラくて疲れてしまった・・・」「高齢医療に興味があった」など、転職を考えるキッカケは人によって違います。そこで、実際に地域包括支援センターに転職した看護師たちのリアルな《転職理由》をいくつかピックアップ!

看護師の役割・仕事内容 看護師の役割・仕事内容
医療や介護、福祉、教育機関など、看護師が活躍できる場所はさまざまです。超高齢社会の現在、医療はもちろん、介護・福祉分野でも高い看護師ニーズがあります。そこで、福祉分野である地域包括支援センターに注目し、そこでの看護師の仕事内容や役割についてまとめてみました。